中根氏は、日本人の社会はタテ社会であると言いました。これは儒教の影響もあると思いますが、人間関係の中で、さまざまな暗黙の序列が付けられるようになります。
武士と農民、先生と生徒、夫と妻、親と子、という関係では、そのまま教える人−教えられる人、従える人−従う人、という関係が生まれますし、目上の人、上司、先輩などを敬い、その命令には服従しなければならない。
上官や上司の命令に従っておれば、安全であり、ある権威の傘のもとに安定した生活が保証されるということです。
この場合の権威は、より権力のある権威に従う方が、安泰であるということになります。特に農村部で自民党の支持率が高いというのは、こうした日本的な考え方が根強いということもあるのではないかと思います。
また、日本がタテ社会であるということは、たとえば、会社員の場合、どの会社に勤めているかが重要なのであって、そこでどういう仕事をしているかはさして重要ではないということに表れています。
いわゆる一流会社に勤めているか、無名の会社に勤めているかということがステイタスを決定することになります。会社に序列を付けるのです。
そして、さらに会社においてはどの部のどの課に所属しているか、何課長の下にいるということがその会社での自分の将来を決定するのに大きな影響があるということです。
このようにタテ社会においては、必ずその人が所属している団体や地位、などによって、序列を付けることになります。
ですから、田舎に行くと必ず聞かれることは、「あなたはどんな仕事をしていたの。」「どんな学校でたの。」「今は何をやっているの」「奥さんはどんな人」ということです。田舎に行くと、会う人会う人に聞かれることになります。
一般に日本の会社は、タテの関係は濃密ですが、横のつながりは非常に薄いといわれます。
営業と工場とか、総務と現場関係(業務など)との関係は概して弱いといえます。自分がついた上司が出世コースに乗り、その上司から気に入られて出世するというのが極めて日本的な出世コースです。
タテ社会は「場」(村、地区、組はそれぞれの場になります)で人間がつながっていますから、その場から離れる、あるいは、その場で相手にされないということになると、大変大きな損失を被ることになります。
日本ではリーダーは年長者がなるのが一般的であるのは、その集団に所属している年数が重要だからだと中根氏は指摘しています。
アメリカンドリ−ムというのは、どんな境遇にある人でも、努力をした人、業績をあげた人が成功者になるということを表す言葉ですが、日本の特に田舎の場合は、年功序列が根付いています。
会社においても、稀に若い人が大企業の社長になることもありますが、大半は順送りです。
中根氏は、こうした日本的なものの考え方、あり方は、日本においては論理に基づいた真の意味での批評は成り立たず、非難しかないということを嘆いておられます。
また、中根氏は、「ウチ」と「ソト」という概念についても言及しておられます。ウチの者にはやさしくするけれども、ソトの者、ヨソ者には冷たいということです。
これは、池田首相が言っていた「自分さえよければ」ということにも通じることでしょう。東京大学経済学部の佐和隆光教授は、日本人の者の考え方の特長として、「知人に親切、他人に不親切」という言葉で表現しておられます。
ウチ、すなわち仲間意識をもっている人、自分の家族、自分の会社、自分の組、自分の村(ただし村八分にされた人はウチとはみなされません。)
私は、このウチ、ソトという思想が、日本の福祉を貧相なものにしてしまっているように思えてなりません。また、視野の広いものの見方、考え方をしたり、改革をしたり、新しいことにチャレンジする思いを摘んでいるのではないかとも思わされています。
また、以上のようなものの見方や慣習があるために、日本では長い間「個」というものが育たず、「自立した主体性」「自身による責任ある判断」「他者への配慮(特にソトなる者)」に欠け、「主権在民」などと言われてもピンとこない、ということになっているように思われます。
このところでは、日本人のものの見方、考え方について、わたしの問題意識として特に改善していきたいと思うことを述べさせていただきました。
ここで指摘したようなことは、田舎、都会、世代の違いに関わらず、日本人が共通に持っているもののように思われます。
そしてこのことは、田舎暮らしをするようになると、より鮮明に見えてくることのように思われます。それにもかかわらず、私が田舎暮らしを選び、田舎暮らしを勧めるのは、田舎には、より人間らしい暮らしがある、目に見えるものより、目に見えないものを大切にする情があると感じるからです。
もちろん、日本人として誇りを持ちたいよい面もたくさんあると思いますが、以上の点も同じ日本人として、自分のこととして受け止めていきたいと思っています。
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